後悔日和

わかりみ

たま『たま』(1996)

1990年に「さよなら人類」で鮮烈なデビューを果たした、アートフォーク(?)バンド、たまの7thアルバム。このタイミングでのセルフタイトル!すごい。


前年末に「さよなら人類」の作詞作曲を担当した柳原幼一郎(Key.Vo)がソロ活動に専念するために脱退、3人編成の新体制・「3たま」として新たなスタートを切ることとなった、たま。


本作はその新体制初となる音源。従来のたまの特徴である、耳なじみの良い美しいコーラスとアコースティックを基調とした楽曲はもちろん、実験的な試みを施した楽曲も多く収録。


特に、この音源では石川浩司Per,Vo)の楽曲が出色である。「デキソコナイの行進」は個人的には人生賛歌だと思うし、「青い靴」の幻想的な世界観はこのアルバムの楽曲の中でも随一だし、「全裸でゴ・ゴ・ゴー」は彼お得意のナンセンスさがタイトルから全開だ。


知久寿焼G.Vo)もどこかエロチックな「あんてな」や没入感に満ちた「ねむれないさめ」で知久ワールド全開。『ちびまる子ちゃん』のエンディングテーマとして書き下ろされた「あっけにとられた時のうた」は原作者・さくらももこが歌詞を担当。シングルカットされ、お茶の間の子供達にも親しまれる楽曲となった。


滝本晃司Ba.Vo)の楽曲群はひとことで言うと「夏」。本作以降、音符に対して言葉数を多く乗せた楽曲が多く見られるようになり、その片鱗は「なぞのなぞりの旅」でも確認できる。ヨーロピアン調な「レインコート」のコード感やアグレッシブな「終わりのない顔」の曲展開もいちいち凝っていてステキ。プレイ面でも「青い靴」の歪んだベースソロが圧巻だ。


ゲストミュージシャンとして参加した斎藤哲也Key)や栗コーダーカルテットの面々も好演を残した。特に斎藤が担当した「青い靴」のバックで暴れ狂うオルガンや「全裸でゴ・ゴ・ゴー」でのキーボードソロは何度聴いてもカッコがよろしい。


個人的には、「3たま」となってからのアルバムの中でも、12を争うくらいに好み。3人になっても飽くなき音楽への挑戦(この後、大胆なシンセの導入や、超アコースティック編成「しょぼたま」での活動へと続く)と、楽曲のクオリティのバランスが見事に均衡が取れた一枚。


惜しむべくは、本作と次作『パルテノン銀座通り』そして2枚をまとめたベストアルバムが廃盤となっていること。なかなかよいアルバムなのでぜひなんらかの形で聴いてほしい。求む再発!!!


たま

たま