後悔日和

わかりみ

挫・人間『苺苺苺苺苺』(2013)

2008年、熊本にて「全人類への復讐」を旗印に、下川リヲ(Vo.G)を中心に結成されたパンクバンド(だとぼくは思っています)。

ナンバーガールINUのコピバンを経て、筋肉少女帯、たまの要素、そしてバンド名にもまんま現れているさまざまな「挫折」を経て、それを代価に(?)「閃光ライオット」に出場し、特別賞を獲得。メンバーチェンジを経た後にリリースされた1stアルバム。

呪怨とリビドーと憧れと恋とその他なんやらかんやらを煮詰めたようなサウンドと歌詞はある意味で凶悪。下川本人もあまり聴かないらしい。

ど頭の「人類」は大学生(または糞人間共)に対する、妖精・下川リヲからの宣戦布告だし、「タマミちゃん」のナゴム系×メンヘラ的な掛け合わせは他にできる人がいるのだろうか?という組み合わせだし。

かと思えば「キス!キス!キス!」はねじれたポップソング。そして、その後の「何故だ!!!」の落差が半端ない。「初恋の君はGLAYのコピバン野郎と恋だ!合体だ!」…悲しいかな、この歌詞が実話ベースだということが。冒頭の怒涛の語り(もはや悲鳴に近い)がとても好きだ。このエネルギー、ほかにある?

以前、偶然下川が行なっていたツイキャスにコメントをしたのだが「うったまがった節」の歌詞にホームセンター・ナフコが登場するのは自分でもよくわからないとのこと。後半の歌詞、ビリビリきます。

「ちんちん大臣」はナンセンスソングなのかな?このレコーディング後に脱退した山口慎太朗(G)(後に公式HPにて下川の妹の彼氏だったことが明かされる)の力の抜けたソロ、この空気感が好きです。ライブアレンジもいいよね。あとアベマコト(Ba)がめっちゃいい声でワンフレーズ歌うとこ。

「ピカデリーナ受精」のカッティング、エッジの効きまくったベースとドラムの掛け合いもビシビシくる。このアルバムに参加しているオリジナルメンバー・吉田(Dr)のプレイが好きだったので、またどこかで聴けないかしらん。

「天使と人工衛星」は純粋なポップソング。良いパンクバンドには良いポップソングが一曲はある(と思っている)。「気づかれぬようにドキドキも忘れて ナイショにしたいよ!」ってアホみたいによくないですか???90年代のヒットソングにありそうだよ。

ラスト3曲の流れもすばらしい。「もしも私にお金があったら すぐにあなたを孕ませたでしょう」なんて歌詞から始まり、壮絶な轟音で展開される「サラバ17才」は非の打ち所がない鬱屈、焦燥感が見事に昇華されている。「天国」はシンプルにいい曲だ。素直な歌詞、良いメロディ、グランジですなあ。「式日」は下川の実妹(らしい)がボーカルを取るタイトルトラック的な小品。せつない。なんだこれは。このアルバム一枚でこんなに感情を振り回されるのか…となってしまう。このピュアネスと邪悪さのさじ加減ににおれは毎回やられてしまい、そしてまた聴いてしまうのだ。

スペシャルサンクスに「インターネット」って書いてるし、浅っさい自分の知識でどれだけ彼らのことを書けているかわからない。むしろ解釈違いかもしれない。

けれど、このアルバムに込められた熱量、これだけは誰が聴いても確かだ。サブスクでも簡単に音楽を聴ける時代だけれど、挫・人間はCDを買って歌詞を読んで、そしてライブにも足を運んでほしい。インターネットに収まりきらないリアルもあるはずだと自分は思っているし、円盤には収まらないロマンとかエネルギーとかもあるはずだ。てか実際にあった。けどインターネットはやっぱり大好きなのでした。しかしスマホでブログって意外と書けますね。おわり。


苺苺苺苺苺

苺苺苺苺苺